Snow Runner
発売日:2020/04/28
海外ストア配信のみ
日本語字幕未対応
Xbox One Xエンハンスド:○
4K:○
HDR:×
レビュー執筆時のプレイ時間:およそ100時間以上
【好きなところ】
・オープンワールド化・RPG的な要素の導入によるゲームプレイの拡張
・広大なマップ
・前作同様、運転すること自体が楽しくやりがいがある
・豊富でチャレンジしがいのあるミッションの数々
・泥、雪、水といった自然の表現の進化
・グラフィックの大幅な向上(特に遠景、車内など)
・ゲームプレイを邪魔しないが印象的なBGM
・大幅に種類の増えたトラック・車両と車体のカスタマイズ
・ボタン配置の刷新による操作性の向上
・相変わらず楽しい協力プレイ
【イマイチだったところ】
・細かなバグの多さ
・前作同様、プレーヤー以外の生命の存在を感じない世界(鳥は空を飛んでいるがせめて鹿くらいいてもいいのでは?)
・ミッションシステムがやや煩雑
・フォトモードがない
【まとめ】
このゲームを私なりに一言で表現するならば『オープンワールドドライビングRPG』である。
Spintires,Mudrunner(Spintiresのリメイク完全版の様な位置づけ)と着実に進化してきたシリーズは、ここに来て純粋なドライビングシムから少し方向性を変化させた。
もともとこのゲームはトラックで木材を指定地点まで運ぶだけのゲームだった。
ただ普通のドライビングシムと違ったのは、その場所が雪解け直後の泥道であるということ。
所々水没し、酷いところになるとアスファルトで舗装された路面も崩壊し泥が噴出している。
そんな悪路を数々のトラックを使い荷物を運ぶ。
車体のバランスに気を使い、タイヤへのトルクの掛け方を調整し、時にはウィンチを使って泥沼から脱出する。
そんな地味ながらもストイックなプレイが印象的なゲームであり、コアなファンを獲得していた。(もちろん筆者もその1人である)
今作Snowrunnerではその基本部分はそのままにエンターテインメント性を大幅にアップさせることに成功。
ミッションごとに1マップ(基本は9ミッション、9マップ+チャレンジモード9マップ)だった前作から大きく拡張し、3つのエリアを展開。
紅葉も美しいアメリカのミシガン(4マップ)、雪に閉ざされパイプラインの張り巡らされたアラスカ(4マップ)、一番前作に近いイメージのマップとなる春を迎えたばかりのロシア タイミル地方(3マップ)とロケーションも豊富だ。
各エリア、マップごとに多数のメインミッションとサイドミッションを用意してプレーヤーを圧倒する。
また、エリアごとに大目標(ゲーム内の表現はRegional Progress=地域の進行度)が設定されており各地のメインミッションを順番にクリアしていくことで達成される。(パイプラインを復旧、採掘現場を設置など各エリアごとに2〜3の大目標がある)
この大目標の達成=各地域の復旧完了=エリアのクリアとなる。
メインミッションでも大目標に関係ないものもあるのでそれを無視するもクリアするも自由。
また無数にあるサイドミッションのコンプを目指すのも良いだろう。
そのためわずかではあるがストーリー性も生まれている。
例えば、大洪水による被害を受けたミシガン地域では切れた電線を復旧するために荷物を運び、電力網が復活したらその施設から荷物が運び出せるようになり、さらに別の施設を復旧させるといった具合。
最終的には採掘施設に巨大なドリルを運んだりもする。
各地域を徐々に復興させていく楽しさを感じられるだろう。
個人的に嬉しかったのは車体のカスタマイズだ。
エンジン、サスペンション(車高調整)、タイヤ、デフロックの有無、前輪駆動の有無、用途に合わせた装備(クレーン、荷台、燃料タンクなどなど)といった多数の項目を変更することができる。
これらの項目は最初から変更できるものもあるし、ゲーム内通貨で購入できるものや、ゲーム内のフィールドに配置されているアップグレードパーツを見つける必要があるもの、またはプレーヤーのランクによって開放されるものもある。
また、走破性能には影響しないスキンのカスタマイズもある。
カラーリング(選択式)、各種アクセサリー類(バンパーや追加ライトなどなど)といったものも変更可能だ。
こういった要素はリプレイ性を高めるとともに全体的な難易度調整の役に立っているとも言える。
車体のパワーアップをすることで、テクニックではカバーし切れない難易度の高いミッションや路面状況をクリアすることもできる。
もちろん、敢えてその辺りを縛ってストイックにプレイするのもプレーヤーの自由だ。
今回RPG的な要素として、プレーヤーのランクとゲーム内通貨が導入された。
アップグレードパーツや放置された車輌・トレーラーを発見するとランクアップのための経験値(☆マーク)がもらえる。
またミッションをクリアすると経験値に加えてゲーム内通貨がもらえる。
ランクが上がると受けられるミッションが増え、時にはアップグレード項目の開放もある。
さらにランクアップすることで新たな車両を購入できるようになることもある。
これも今回から追加された要素だが、トラックストアの利用ができるようになった。
条件を満たし必要なだけのお金を支払えるならば自由に車両を購入できる。(アメリカとロシアで購入できる車両は違う)
前作はミッションごとにポイント上限の範囲内で車両を選んでいたが、今作は初期車両はスカウト(偵察・探索)用のシボレーが一台と非常に寂しい。
そのため新しい車両を見つけたり、お金を貯めて新規購入したりといったことが必要になる。
こういったところも非常にRPG的だ。
結果的に序盤が丸ごとチュートリアルとなり、前作よりも自然にゲームの流れを学べる仕組みとなっている。
実際このゲームはチュートリアルミッションからスタートするが、トラック数台を管理してメインミッションを複数クリアし最初のエリアであるミシガンの4つのマップを全て行き来するようになるくらいまではチュートリアルと言ってもいいくらいだ。
今回オープンワールド化(複数の箱庭マップの集合ではあるが便宜上こう表現する)とRPG要素を取り入れたことでかなり幅広い層にアピールできる作品になったことは確か。
なによりも広大な大地をのんびり走ったり、未知のエリアを踏破するのはとても楽しい。
この点は前作から変わっていない。
今回ミッションの中に『橋を復旧する・落石をどかす』といったものがあり、それを達成することでエリアが広がったり近道できるようになるものもある。
こういったところも非常にRPGっぽくて楽しいところだ。
そこをめんどくさいと思う方は残念ながらこのゲームに向いていない(笑)。
『移動することそれ自体を楽しみ、そこにゲーム性を見出す』という点において過去様々なゲームが色々な方法でチャレンジしてきた。
ファストトラベルを搭載するのではなく、移動自体を面倒なものではなく楽しめるものにしようという考えだろう。
もちろんSnowrunnerでもガレージへのファストトラベルはある。
ただそれは転倒したり地形にはまった時の救済策としての意味合いが大きいように思う。
例えばRockstar社の名作オープンワールドゲームであるレッドデッドリデンプションでは、馬で旅している途中にアクシデントに出会ったり、自然の風景の移り変わり自体を美しく描くことで移動にゲーム性を与えた。
そして小島監督の最新作デスストランディングでは重心移動や荷物の積み方といった点を追求することで、地形とキャラの関係性をプレーヤーに強く訴えた。
デスストランディングには道路の敷設などもあるが、あれはどちらかというとファストトラベル的思考と移動を楽しむ思考のミックスによるものに思える。
そしてこのMudrunner,Snowrunnerシリーズもまた移動(=運転)すること自体を追求したゲームである。
はっきりいってこのゲームの移動はどのゲームよりも時間がかかる。
ある意味『究極のお使いゲーム』ともいえるゲーム性ながらファンの心を捉えて離さないのは、その移動に関するこだわりに他ならない。
事前にマップから情報を読み取りルートを決め、実際に走り始めてからも逐一路面状況を把握してその瞬間に適したライン取りをし、適切なギアを選びトルクを調整する。
それこそミッションをひとつクリアするのに1時間以上かかることもざらだが、このゲームにおける移動の楽しさ・移動それ自体にゲーム性を持ち込むということを考えるに、時間がかかることは決してマイナスではないといえる。
深い泥沼にはまってしまい前にも後ろにも進めないといった状況でどうするのか?
アクセルをゆっくり踏んでタイヤに徐々にトルクをかけることで抜けられることもある。
またはウィンチを使って強引に抜け出すのも良いだろう。
そもそも、しっかり観察してライン取りをしていれば泥にはまることはなかったのではないか?こんな風に考える楽しさがある。
Snowrunnerにおいての移動は決してお使いを達成するためのものではない。
移動を楽しみ、泥沼に真っ向勝負を挑んだ結果お使いが達成されるのである。
ミッションのクリアは目標であって目標ではない。
そこまでの過程こそがこのゲームの真の楽しさであり、素晴らしいところなのだ。
協力プレイに関しては前作とシステムが変わったため変更されている。
ホストとなるプレーヤーの世界に参加する形での協力プレイとなった。
そのため参加した状態でミッションをクリアしても、自分の世界ではクリアしたことにはならない。
ただし経験値とお金は貰える。
これを利用して既にクリア済みのミッションでも参加してクリアすれば経験値とお金が稼げるのだ。
なにより協力して様々なミッションを達成するのは楽しい。
必要な素材を複数人で持ち寄ればソロプレイの何倍も早く終わる。
じっくりやりたいプレーヤーはソロでやれば良いし、少し難しいと感じるなら他のプレーヤーの力を借りるのも良いだろう。
野良でもパーティーでも4人まで同時にプレイ可能だ。
最後にゲーム全体の評価におけるマイナス点にも触れておこう。
現状あまりにもバグが多いように感じるが、この手のオープンワールドゲームにはある程度付き物なのでアップデートでの修正を待とうと思う。
ただ、ガソリンスタンドで給油できなくなったり橋を渡ろうとしたらそのまま川に落ちたりすることがあるので早めの対応を願いたいところだ。(2時間近くかかったミッションのクリア直前で、橋から荷物だけ谷底に落ちていったときは流石に凹んだが)
Snowrunnerはドライビングシミュレーターの歴史に残るゲームの一つであることは間違いないと思う。
それと同時にオープンワールドドライビングRPGという新ジャンルを開拓したといっても過言ではない。
ぜひ幅広い層のプレーヤーにチャレンジしてほしい作品だ。
日本語非対応なのが悔やまれる。(おそらくPS4では日本版が発売されると思われる)
2020/05/7 中の人1号 ナヴェ